スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

真・菊地探偵事務所 三章 4

4 閉じる世界

 セトを倒した真達は、奥に見つけた通路をそのまま辿る。
 風の吹く方へと歩を進めると、いつしか眼前に光が見えてきた。
「あれは……」
「悪魔ではなさそうですね」
 真が様子を窺っていると、横からホルスが囁く。
 その言葉を信じ、更に進むとその光が出口の光だった事に気付いた。
 久しく壁のない場所に出ていなかったので、自然と足も早くなり、一行は駆け足で外へと出た。
「うわ……」
 しかし、そこで見た世界は全てを壁で囲まれた町。
 いや、その町自体が壁を形成していると言い換えた方がいいだろうか。
 地面がせり上がり、頂点で融合する。まるで風呂敷で物を包むようにして、地面がめくれ上がっていたのだ。
 そして、天井に位置する地面にも、普通に建物が建っている。あちらにも重力が外側へ働いているらしい。
 極め付けに、その閉じた世界の中心に、ぽっかりと青い光を放つ星の様な物が浮いている。
 これが受胎により出来上がった、生まれ変わる前の世界、ボルテクス界である。
「あの浮いているのがボルテクス界の創世の鍵、カグツチです」
「カグツチ……どこかで聞き覚えが……」
「あの、真ちゃんの持っているその剣の銘って……」
「そうか、これもヒノカグツチだ。どうして同じ名前をした物があんなところに……?」
 真は自分の持っている剣、鞘に収まったヒノカグツチと天に浮くカグツチを交互に見て首を傾げる。
「真さんの持つヒノカグツチと、あのカグツチは似て非なるものです。貴女の剣であるヒノカグツチは『神殺し』の神性だけを抽出した唯一無二の最強剣。そして、天に浮くカグツチは創造と再生の神性を凝縮したエネルギー体です。ですが、貴女の剣もあの星も、どちらもアクマと呼んで差し支えはないですよ」
「な、なるほどなー」
「アンタ、理解してないでしょ?」
 イオリに突っ込まれ、真は冷や汗をたらした。


 改めて辺りを見回すと、見慣れた町並みが変形した姿で残っているのがわかった。
 ここはHRインフォメーションのあったオフィス街の近くだ。
 しかし、良く見ると町の中心近くに大きなクレーターが出来ている。
「あれもボルテクス界が出来た影響なの?」
「さぁ、あればっかりは私にも……」
 今まで流暢に説明していたホルスも口ごもる。
 ボルテクス界が出来ると、地形が変わったりする事はあるが、あれだけ傷跡が新しすぎる様な気もする。
「あれは誰かが戦った跡じゃないの? 前にも見覚えあるわよ?」
 イオリが呟くのに、ホルス以外の記憶が刺激される。
 確かに、あずさの家付近で千早と戦った時、あんなえぐれた地面が出来上がっていた。
「じゃあ、近くに千早がいたって言うのか?」
「その上、派手にやりあったみたいじゃない。千早と同等のアクマがいると思って間違いないでしょうね」
「ちょっと見ない間に、この町もすごく変わったな……」
 なまじ見覚えのある風景が混じっているのが、その感想を深くさせる。
 変わり果てた馴染みの町。その中に、一行は足を向けた。

****

「貴女の持つペルソナは、最高位と言って良い。それ以上を求めるとなると、少々辛い道を進む事になりますな」
 青暗い部屋、ベルベットルームの主人であるイゴールは、千早にそう言った。
「どんなに辛かろうと、私は歩むわ。だから教えて。どうすれば強いペルソナを手に入れられるの?」
「ふむ、生半可な覚悟ではない、と言う事でしょうか。よろしい、お答えいたしましょう」
 そう言ったイゴールは一つのタロットを掲げる。
 書いてある文字は『世界』の文字。
「これは昔、とある少年が手に入れた世界で唯一のペルソナ。このペルソナは奇跡を可能にする強さを持っております。これさえあれば、貴女の望むままに世界は姿を変えるでしょう」
「そ、そのペルソナ……」
「しかし、貴女ではこれを扱う事はできない」
 イゴールはカードを懐に入れ、頭を振った。
 それを見て、千早の眉間にシワがよる。
「どういうつもり?」
「このペルソナはコミュニティの力の結晶。他人との絆を最大限にまで強く結び、それを幾重幾本にも及んで織る事が出来て初めて手にする事ができるのです。……言いにくいのですが、貴女はその資格をお持ちでない」
「他人との……絆?」
 言われて過去を振り返る。
 確かに、それほど強く結んだ絆など覚えもない。
 唯一あるとすれば、今は宿敵と呼んで相応しい相手とだけ、何物にも代えがたい、強い絆を結んだ事があっただろうか。
 しかし、思い浮かんだその絆を、千早はかき消す。
「じゃあ、他には?」
「それ以外にシヴァ以上の力を持つペルソナとなりますと難しいですな。同等の神格を持つヴィシュヌは力量も同等。数段上をお望みならば、それは私の既知の外となります」
「……役に立たないわね」
 苛立ったように椅子から立ち上がり、千早はドアに手をかける。
 出て行こうとする千早に、イゴールは最後に声をかける。
「お客人、コミュはペルソナの力になります。絆を結べばペルソナも強くなりましょう」
「私は今まで一人でやってきたわ。これからもそうするつもりよ」
「そうですか……では最後に一つ、くれぐれも『反転』なさいませんよう、お気をつけて」
「……? 良くわからないけど、心に留めておくわ」
 千早の背中が見えなくなっても、イゴールはその気味の悪い笑みを絶やさず、ドアを睨むようにして見ていた。

****

 春香とモムノフの前に立ちはだかる、酩酊者は高笑いする。
「がっはははは! その程度で俺に立ち向かうつもりだったのか!? 甘い、甘すぎるぜ、テメェらぁ!!」
 千早が向かった方へ続く道は、地下道の一本道。
 しかし、その狭い通路には、ドでかい魔神マダが行く手を塞いでいたのだった。
「くそっ、なんなのよ、アイツ! 私のパンチが効かないどころか、衝撃を受けて大きくなってる……ッ!」
「コイツは物理的な衝撃を吸収して強くなるんだよ! だからお前を連れてきたってのに……」
 行く手を阻むマダの前に、春香もモムノフも苦戦していた。
 と言うのも、攻撃手段のバリエーションに乏しい二人は、マダの物理攻撃を吸収する特性に難儀していたのである。
「おいハルカ! お前、マグマなんちゃかって撃てないのかよ!?」
「なによ、その……マグマなんちゃかって」
「お前の得意技だろ!? 忘れたとか言うなよ!?」
「得意技も何も、聞いたことすらないわよ!」
 言い争っている間にも、マダの攻撃が襲い掛かる。
 周囲を覆うように充満する酒気。それが春香とモムノフの感覚を鈍らせる。
「うぷ……気持ち悪い……」
「ぐぅ、酒に弱いわけじゃねぇが、これは辛ぇな……ッ!」
「そのまま酔いにおぼれて死んでいけよ、雑魚共がぁ!」
 大きく突き出されたマダの両手から、黒い衝撃波が発せられて二人を襲う。
「さっきの女には後れを取ったが、俺ぁこの道の番をしっかりやり通すぜぇ!」
 自身の最大攻撃を直撃させ、勝利を確信したのか、マダは高笑いを上げる。
 しかし、その黒い衝撃波が過ぎ去った後に、しっかりと二人は立っている。
「気分の悪さは取れないけど、攻撃は大した事ないわね」
「こちとら打たれ強いのが自慢だ。そんなヌルい攻撃じゃ、倒れねぇよ」
「なぁっ!? 雑魚の分際で往生際が悪いぜ!」
 一瞬うろたえたマダだが、しかしもう一発、攻撃をしようとしたところで、モムノフは背を向ける。
「こりゃ旗色が悪い。ハルカがマグマなんちゃらを撃てると思ったからつれてきたのに、とんだ誤算だぜ」
「そりゃ悪かったわね! で、逃げるの?」
「ああ、背に傷を受けるのは武士の恥……だが、それでもやらなきゃならん事が、俺にはあるんだよ!」
 モムノフはそのまま一目散に逃げ出す。春香もしぶしぶながらそれを追った。
 マダを相手にするには手札が足りない。このままでは一方的な消耗戦になってしまう。
 ここは出直すのが得策だろう。
「ぎゃははは! いいぜ、ここは見逃してやらぁ! でも次はないと思えよ!」
 そう言ってマダは二人を見逃すようだった。
 屈辱ではあったが、今はそれを我慢しよう。

****

 オフィス街の地下まで戻ってきた春香とモムノフ。
 落ち着いたところで作戦会議だ。二人はどうしても、マダのいる場所より奥を目指したい。
「で、どうするのよ? 何か方法はあるわけ?」
「……お前が何か強力な魔法を使えればそれで良いんだけどな」
「強力な魔法……今使える魔法じゃ心許ないかしらね」
 ヒビキと戦った時に見せたアギダインはかなり強力な魔法だが、それでも力不足と言う事だろうか。それよりも強い魔法となると、千早の使うようなメギドラオンなどしかないように思える。
「前に聞いた事がある。人修羅って特別な悪魔にはソイツしか使えない魔法や特技があるらしい。それを使えるようにするには、マガタマって言う蟲みたいな奴を使って力を解放するといいんだとよ」
「人修羅……って、あのデビルサマナーだか言う女が、私の事をそんな風に呼んでたわね」
「やっぱり、俺の思った通りだ。お前が人修羅なら、お前の力をマガタマで解放すれば、あのマダって悪魔も楽勝だぜ」
「じゃあ、私一人でも通れそうね。と言うわけで、アンタとのチームも解散ね」
 そう言って春香は手を振り、モムノフと別れようとするが……
「おい、行き先はわかるのかよ?」
「行き先?」
「マガタマにはそれぞれ特性がある。ちゃんとマガタマを選ばないと、欲しい魔法は覚えられないぜ? そして、俺の手の内に一匹、マガタマがいる」
 モムノフが取り出したのは銀色の芋虫のような物体。
 動いてはいるが、その見た目が無機物っぽいので、生物の様には見えない。
「それがマガタマ……? これをどうするのよ?」
「飲み込むんだとよ」
「そう言うのはテレビ番組だけで十分よ。ゲテモノを食べるなんて、絶対嫌だから」
「じゃあどうするんだよ? このまま手をこまねいてるのか? 正直、あのマダを抜く方法なんて、俺にはそうそう思いつかないぜ?」
 春香にはもう一つ、手が浮かんでいる。
 真に打診し、雪歩を連れてきてもらうこと。彼女は確か魔法が使えたはず。もしかしたらマダを倒すような強力な物を持っているかもしれない。
 しかし、こないだ『一人でやる』と言った手前、すぐに助けを求めるのも憚られる。
「……わかったわよ、食べればいいんでしょ!」
 どうやらプライドが勝ったらしい。覚悟を決め、春香はモムノフからマガタマを奪った。
「じゃあ、そのマガタマをやる代わりに、俺もあの奥へ連れて行ってもらうぜ」
「仕方ないわね、契約成立って事で」
 鼻をつまみ、春香はマガタマを口の中へ放り込んだ。


 ふと、世界が暗転する。
 春香は自分が目を閉じていることに気付き、まぶたを開く。
「ようこそ、人修羅。待っていたよ」
 視界が開けると、そこは舞台の様だった。春香は観客席に立っている。
 周りは赤黒く胎動し、それが何か力の流れだと、本能で理解した。ここはアマラ経絡の外れ。いや、もっと深い場所。
 見上げると、ステージの上には金髪の老人が車椅子に乗っている。
「あ、アンタは……?」
「覚えていないのも無理はないか。私は君に新たな命と力を吹き込んだ者だ。そして、君をここへ呼んだのも他ならぬ私」
「何の目的で? やりあおうって言うなら容赦しないわよ?」
 パッと構える春香だが、それを見て老人は笑う。
「いやいや、私は君と事を構えるつもりはないよ。逆に、君に協力したいんだ」
「……協力? 何が望み?」
 すぐにギブアンドテイクの考えに行き着くのは、商売をしている人間の性か。
「対価は求めない。ただ、君は君のまま、このボルテクス界を歩くが良い。君の望むまま、君の思うまま、この世界を見て、感じて、そして答えを出してもらおう」
「答え……?」
「そう、最終的に堕ちたる天使、明けの明星の駒となるのか……あるいは」
 老人が春香に向けて手を差し伸べると、また視界が暗転する。
 彼女は自分の目ゆえに見えてはいなかったが、その目が一瞬、赤く光る。
「その心は人のままでいられるのか」
 心に深く響くように、老人の言葉は春香の耳へと落ちていった。


「お、おい! どうしたんだ!?」
「……え?」
 気がつくと、モムノフが春香の肩をつかんでゆすっていた。
「いきなり気を失うんだからビックリしたぜ。何があったんだよ?」
「私にも良くわからない……でも」
 春香は自分の拳を見て、ただならぬ力を感じる。
 それはどんな盾も鎧も、軽く貫いてしまうような力。
 これがあればマダも、あのヒビキと言うネコマタも怖くない気がしてくる。
「行こう、モムノフ。リベンジマッチよ」
「はぁ? 魔法はどうしたんだよ?」
「そんなもの、必要ないわ!」
 みなぎる力を感じ、春香は笑みを浮かべずにはいられない。
 この力があれば、どんな世界も渡り歩ける。そんな気すらした。

*****

 再び意気揚々と、二人はマダの許までやってくる。
「あぁ? またお前らかよ。なんだ、死にに来たのか?」
「逆よ、アンタなんか、一撃で葬ってやるわ」
「……笑えねぇ冗談だな、おい! 出来るもんならやって見やがれ、コラァ!!」
 振り上げたマダの拳が、猛烈な勢いで春香の上に降りかかる。
 傍で見ていたモムノフは肝を冷やした。春香は一切の防御行動を取っていないのだ。
 しかし、彼女は口元を緩める。既に、何の恐怖も圧力も感じない。
 マダはもう、彼女の敵ではない。
「笑わせるわ、その程度!」
 マダの拳がぶつかる直前、瞬速で繰り出される左の拳。
 ぶっきらぼうに振りぬかれたその拳は、マダの右腕を粉々に砕いた。
「お、おおお! ぐおおお!!」
「私は手に入れたわ、アンタなんか片手でぶち破る力を! でも、だからって手は抜かない! 全力で、確実に、完膚なきまでに、アンタをぶち壊してやる! モムノフ、タルカジャ!」
「お、おう」
 春香のオーダーに、モムノフは慌てて答える。
 物理的な衝撃を倍に、更に倍に、モムノフの補助魔法で春香の破壊力が恐ろしいほどに高まる。
「こ、この! 雑魚悪魔風情が! 俺様に楯突くと、どうなるかわかってるのか!」
 やられる前にやれ、と言う心積もりなのだろうか、マダは黒い衝撃波を何度も発生させるが、それでは春香もモムノフも止められやしない。
「これで限界まで補助はかけたぜ」
「ありがとう。……さぁ! コレからが私のターンよ!」
 春香は腰を落とし、右腕を高く掲げる。
 その手に光が凝縮し始め、その形を剣のように作り上げる。
 気合も十分入り、自身でも最高の攻撃が打ち出せる気がした。
 この攻撃は、もう誰にも止められない。誰も耐えられない。
「喰らえッ! コレが本当の……冥 界 波 ッ!!」
 その剣を振り下ろすと同時、切っ先からとてつもない衝撃波が轟く。
 赤黒くのたうつ攻撃的な波は、そのままマダを飲み込み、グシャグシャに噛み潰して余波だけ残して消え去る。マダの姿はもう、どこにもなかった。
「ふぅ、楽勝」
 手に握った光の剣も掻き消え、春香はため息をつく。
 これで地下道を塞いでいたものはない。
「さぁ、すぐに千早ちゃんを追いましょう」
「あ、ああ……」
「どうしたのよ?」
「やっぱり、お前は恐ろしいなって思ってよ」
「ふふ、なんなら私の下につくかしら? 良い合体材料にしてあげるわよ?」
「はっ、ごめんだね。俺には先約がついてるんだ」
「あら、残念」
 そんな事を言いつつ、二人は先を目指した。

*****

「な、なんだ?」
 地響きが聞こえ、真は辺りを見回す。
「大方、悪魔が暴れてるんでしょう。最近は頻繁になったわ」
 答えるのは律子。
 真たちはHRインフォメーションを見つけ、そこで律子と合流していたのだ。と言っても、イオリは別の用事があるとかでいなく、それに付き添ってホルスと雪歩もいない。
 ここにいるのは律子、真、ミキだけである。
「さて、私が集めた情報によると、今、このボルテクス界はたった一つの組織が覇権を握っているわ」
「覇権って……そんな大げさなものなの?」
「当たり前よ。ボルテクス界を制した者が、次の世界の創造主になるのよ? ボルテクス界を制す者は、世界を制すわ」
 確かに、真は軽く考えていたが、律子の言う通りだ。
 この世界を生き残り、カグツチに至った者が創世を行う。つまり、どんな世界も思い通りというわけだ。
「んで、その創世の方法なんだけど……」
「ミキ知ってるの。マガツヒを集めて、コトワリを啓いて、カグツチに登るの」
「そう、その通り。でも言うほど簡単じゃないわ」
 律子は難しそうな顔をしながら顎を押さえる。
「さっきも言った通り、今、ボルテクス界はある組織、ニヒロ機構と言う組織の一強よ。それにそいつらはアマラ経絡を牛耳って、世界中のマガツヒの行き来を管理してる。創世に必要なマガツヒももうすぐ溜まる計算よ」
「じゃ、じゃあ先を越されちゃうじゃないか!」
「そう、残念ながら、ボルテクス界を観光して回るって言う悠長な事もしてられなくなったわ。でも先を越されない為に、打てる手もある」
 企み顔で笑う律子に、真は心強さと恐怖に似た感情を覚え、ただただ苦笑する。

*****

 地下街の中にあった一つの店から、イオリが出てくる。
「ふっ、これから始まる、私の伝説……」
 しかし、その姿は以前のものとは違う。
 まず、明らかに等身が高い。八頭身のそのスタイルは、以前のピクシーからは想像も出来ない。それもそのはず、イオリはもうピクシーではない。
 バンナムの地下で発見した幾つもの宝石と精霊を交換し、更にその精霊と自分自身を合体させる事で、今やイオリは妖精の女王となったのだ。
「これで、あの真にも雪歩にも、ミキにも春香にも、誰にもでかい面させないんだから!」
 声を聞きつけ、ホルスがパタパタと飛んでくる。
「おや、イオリちゃん、見違えましたね」
「ふん、今までの私と侮るんじゃないわよ? なんたって、妖精女王なんですから!」
「ほぅ、女王様……それはそれでアリピヨ……」
「なにブツブツ言ってるのよ、怖いわね……それより、雪歩はどこ?」
「雪歩さんですか? 確か向こうに……」
 そう言ってホルスが指す先、暗がりでうずくまっている雪歩がいた。
「雪歩! なにやってるのよ、そろそろ帰るわよ!」
「えっ!? あ、うん、今行く……」
 ヨロヨロと立ち上がった雪歩は、背を向けたまま口元をぬぐい、二人に駆け寄ってきた。
「あ、雪歩! あんなところでうずくまってたから、服が汚れてるじゃない!」
「えへへ、ごめんね。真ちゃんに怒られるかな……?」
「どうかしらね、今までだって散々土まみれ埃まみれになってたんだから、別にいいんじゃない? 女としてはどうかと思うけど」
「うん、そうだね……」
 力なく笑う雪歩に対し、イオリは張り合いがない、と先を行ってしまった。
 雪歩もそれに続いてその場を後にするが、ホルスだけその場にとどまり、雪歩の座っていた場所をチラリと窺う。
「これは……研究結果が役に立ちそうですかね」
 そう呟いた後、二人を追いかけて飛んでいった。
 残ったのは食べかけの悪魔の残骸のみ。
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

comments

comment form

管理者にだけ表示を許可する

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。