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真・菊地探偵事務所 三章 1

三章 ノクターン

1 新たな出会い

 もう無くさないと決めた。
 もう取りこぼさないと決めた。
 誰一人欠けさせてたまるか。
 この両腕で抱えこめるだけ抱えこんで、全部取り戻してやる。
 この両腕で世界を、仲間を、全てを。
 一度犯した失敗を繰り返したりしない。
 この夢は、きっとその為にあるモノだから。

*****

 真が目覚めると、そこはバンナムの地下にある、大きな部屋だった。
 頭がガンガンと痛む。気分が悪い。
 ボンヤリした視界をゴシゴシこすり、真っ暗な中で目を凝らして辺りを見る。
 どうやらここにいるのは真だけらしい。
「雪歩たちを……探さないと」
 手元にあった剣を拾い、出口へ向かって歩き出した。

 廊下に出ると、足元に非常灯が灯っており、難なく進めそうだった。
 頭痛も気分の悪さも大分良くなってきており、真は軽く屈伸した後、廊下を駆け出した。
 恐らく、受胎は起きたのだろう。何故だかわからないが、それはボンヤリと理解する。
 この空気を前に一度、どこかで感じた事がある気がするのだ。
 これが多分、受胎後の世界、ボルテクス界の雰囲気。
 そして受胎が起きたのならば、どこにいても悪魔はいる。
 身体を維持するのにマグネタイトを必要とせず、今は願いを叶える為の力、マガツヒを集めるのに躍起になっているはずだ。
 そしてマガツヒとは人間やその魂に近い思念体、人間の形を真似て作られたマネカタなどしか生産する事が出来ない。
 となれば……
「雪歩達が危ないかもしれない……っ!」
 一緒にバンナムに入ってきた雪歩達。すぐに探さなければ悪魔に襲われるかもしれない。真の近くに高木がいなかったのも気になるし、もしかしたら彼が悪魔を操って、また何か良からぬ事をやろうとしているかもしれない。
 いや、そうでなくても……
「なんだ……? 思い出せないけど、何か引っ掛かる……」
 引っ張り出せない記憶の引き出しがあるようだった。
 その中には色んな重要事項が詰まっているはずなのだが、思う様に開ける事が出来ないでいる。ただ、なんとなく雪歩とイオリとミキ、その三人を目の届く場所においてなければならない様に思えて、気が急いた。
 様々な問題は追い追い解決する事にする。今は雪歩たちを探さなければ。

*****

「雪歩、起きなさい」
「ん、んぅ……真ちゃん?」
「生憎、白馬の王子様ではないわ」
 廊下で気を失っていた雪歩が目を開けると、目の前には春香がいた。
 場所は地下への階段を下ってすぐの場所。これから真を探そうとした矢先に受胎が起きたのだ。
「ここは……確かバンナムですよね?」
「そうみたいね。でも、どうやら受胎ってのが起きてしまったらしいわ。外は随分様変わりしていたもの」
「春香ちゃん、外を見たの?」
「ええ、見たらみんな驚くわよ。……それよりも、貴女と一緒にいたヤツらは?」
 周りを見回しても、イオリ、ミキ、あずさ、やよいの誰もいなかった。
 ここにいるのは春香と雪歩だけ。
「私が気を失うまではすぐ近くにいたんだけど……」
「行方不明って事かしらね。千早ちゃんと同じか、面倒臭い……。とりあえず、みんなを探しに行きましょう。立てる?」
「う、うん」
 春香が差し出した手を掴み、雪歩は立ちあがる。
 非常灯が灯る地下の廊下はシンと静まり返り、不気味な事この上なかった。
「真ちゃん、どこにいるんだろう?」
「大体の場所はわかるわ。バンナムの中に大きな気配がいくつかするもの」
「幾つかって……」
「一つは真だろうけど、他のは恐らく悪魔かその類でしょうね。気を引き締めなさい」
「わ、わかった」
 怯えながらも力強く頷く雪歩を見て、春香は満足そうに笑みを浮かべ、暗い廊下を先だって歩いていった。

*****

 暗い中を手探りで歩く真。
 転送装置で飛ばされた為、ここがどの辺りなのか全く把握できない。どっちが出口で、どっちが行き止まりなのか、皆目見当もつかなかった。
「案内板とか、ないのかな……」
 突き当たりにぶつかっても、それらしき看板はない。
 どうやら電光掲示板を利用して位置案内をしていたらしいバンナム社内。電力が完璧に止まっている今、アナウンスは一つとして表示されない。
「困ったな……このままじゃどっちに行って良いか……って、あれ?」
 廊下の奥に、フラフラと浮かぶ光を見つけた。
 どう見ても自然光ではないし、誰かが懐中電灯を持っているような感じでもない。
 詰まり、悪魔。
 真はすぐに身構え、剣の柄に手を添える。
「あ、あれ? 真さんじゃないですか」
「え!?」
 だが、驚いた事に、向こうから声を掛けられてしまった。それも結構親しげに。
 羽ばたく音をさせながら、真に近付いてきたのは小さな鳥だった。
 鳥はそれ自体が発光している様で、さっき見えた光はこの鳥のものだったようだ。
「……君は? どうしてボクを知ってるの?」
「またまたぁ、冗談キツイですよ! 私の事を忘れたなんて……」
 しばし、イヤな沈黙。
 鳥が焦る様に羽ばたきを強くする。
「ほ、ホルスですよ! ホルス! ホントに忘れちゃったんですか!?」
「って言うか、初対面だよね?」
「しょ、ショックです……。まさか出会い頭にこんな仕打ちが待ち受けているなんて……」
「えと……人違いとかじゃなくて?」
「当然です! 貴女の顔を見間違えるなんて、ありえませんよ!」
 どうやら本当に真の事を知っているらしいこの鳥、もといホルス。
 だが、真の方には見覚えどころか、悪魔の知り合いなんて今の所片手で数えられるほどしかいないし、その中に当然、ホルスなんて鳥は含まれていない。
 全くの初対面であるはずだ。……だが。
「おかしいな。そう言われてみると、確かに昔一度、会った覚えがあるような……」
「会ったどころか! 一緒にボルテクス界を練り歩いた仲じゃないですか! 忘れるなんて、ぶっちゃけありえないですよ!!」
「なんだかこの感じも懐かしい気すらするね。……でもどうしても思い出せないんだ。それに、ボルテクス界を……練り歩いた?」
 ボルテクス界は受胎によって作られる、新たな世界の前身。
 ホルスはそこを一度、真と一緒に歩いた様に喋っている。
 だが、そんなに何度もボルテクス界が創られるような事があったような記憶はないし、それほど頻発して欲しい物でもない。もちろん、真がボルテクス界に来たのはこれが初めてのはずだ。
 ……だが、この既視感。ボルテクス界に入ってからの違和感。開かない記憶の引き出し。
 それら全てを考えると、ホルスの言っている事を一笑にも伏し難い。
「君が言っているのが本当なら、ボルテクス界は前に一度、出来てたって事?」
「えーと……前に一度って言うか、別の世界で一度って言うか。……あ、そうですよね。それなら真さんが覚えてないのも仕方ないか」
「わかるように説明してくれる?」
「話せば長くなるんですけど……」
「ダメなの!!」
 ホルスが長い講釈を垂れ様としたところに、何かがジャンプキックをかました。
 ホルスはその蹴りをまともに受け、地面を転がった。
「ピヨォ!!」
「ピヨちゃん、何考えてるの!? 全部話したら、ミキ達消されちゃうの!!」
「ミキ!? 無事だったのか!?」
 真の前に現れたのはミキだった。そしてホルスに蹴りをかましたのも無論。
「真くん、今のは全部忘れた方が身のためなの」
「え、でも……」
「いーから! 忘れるの!!」
「わ、わかったよ」
 全然怖くない顔で凄まれ、真は一応頷いておく事にした。
 話を聞く機会ならまたあるだろう。
「いたた……ミキちゃん、再会の挨拶にしては乱暴すぎません?」
「ピヨちゃんが要らない事しようとするからなの!」
「はいはい、どうせ私はお節介ですよ……」
「ミキとホルスも知り合いなの? 仲良さげだけど」
「ミキとピヨちゃんは、一応仲魔なの。それ以上詳しくは言えないの」
「……うん、だったらそれ以上は訊かないよ」
 訊けば、ミキの飛び蹴りを食らいそうだ。
「それよりミキ、雪歩は一緒じゃなかったの?」
「雪歩は……ええと……置いてきちゃったの」
「置いてきた!?」
 衝撃のカミングアウトに、真はミキを殴りそうになった。が、すんでの所で止めた。
「じゃあ雪歩のところに案内してくれ」
「えっと……ミキはホルスの気配を辿って来たの。どうやって来たかは……」
「忘れたって言うんでしょ。ホントアホね、アンタは」
 そこにもう一人、現れたのはイオリだった。
「イオリ! その口振りからすると、期待しても良いのかな?」
「任せておきなさい。このバカ雪だるまが突然走り出したから何事かと思ってつい追いかけちゃったけど、ここまでの道順はしっかり覚えてるわ。でもまぁ、あの娘なら多少放っておいても大丈夫そうだけどね」
「雪歩を放っておくなんてとんでもない。すぐに案内してくれ」
 イオリを先頭に置き、一行は雪歩の元へと向かう事にした。
「ホルスもついてくるのか?」
「ええ、一応。真さんに頼みたい事もありますし」

*****

「は、春香ちゃんって、光るんだね」
「……私の意思とは反してるんだけどね」
 暗い中を歩いていると、春香の刺青の縁が淡く光っている。
 それと非常灯の明かりを合わせて、二人は多少良好な視界を得ていた。
「何か、身体の異常とかないの? 痛かったり、痒かったり……」
「今の所問題はないわね。ただ、身に余るほどの力は感じるわ。悪魔の力ってやつね、きっと」
「それはこう……左の二の腕が熱くなるような?」
「……そんなピンポイントな感じではないけど……」
 雪歩の言葉に首を傾げながら、二人は先に進む。
 ……と、前方に人影が見えた。
「ま、真ちゃん!?」
「いえ、待ちなさい、雪歩」
 駆け出そうとする雪歩を制し、春香が一歩前に出る。
「そこにいるのは、誰かしら?」
「……これは僥倖、と言うヤツですね。こんな所で人修羅と出くわすとは」
「隣のヤツもなんだか不思議な感じだな。ただの悪魔じゃないね!」
 光の届く範囲に、人影が入る。
 その姿はどう見ても真ではなかった。
「だ、誰!?」
「私の名は葛葉シジョウ。貴女達悪魔を狩る、デビルサマナーです」
「自分はネコマタのヒビキ! よろしくね!」
 黒い外套を羽織り、豊かな銀髪をなびかせた女性、葛葉シジョウと、ネコマタという悪魔らしいヒビキ。
 雪歩達を狩る、と言っている時点で既に友好的ではない。敵意が感じられる。
「私達とやるつもり?」
「貴女が人修羅であるなら、それもやむを得ないでしょう。人の世を脅かす悪魔の中でも特に危険とされる種族。貴女が堕ちたる天使に協力しない、と言う確証はありませんから」
「……堕ちたる天使? 誰の事?」
「死にゆく悪魔に、多く語る言葉は持ち合わせておりません。大人しく討たれなさい、妖魔の類め」
 シジョウは流れるような手付きで、腰に帯びていた剣を抜き、素早く春香との距離を詰める。
「だ、ダメです!!」
 だが、春香の前に出てきた雪歩にそれを阻まれた。
「……私の剣を止めましたか。なるほど、チューナーとはこれほどの力を……」
「こ、これって……」
 驚いたのはシジョウだけではなく、雪歩自身もだった。
 左腕が異形のそれへと変化していた。具体的に言うならば、皮膚が赤くなり、異常なまでに肥大化している。
「チューニングには慣れていないようですね……。ヒビキ、貴女に人修羅を任せます。私はこちらのチューナーを」
「わかった!」
 敵二人が戦闘体勢に入るのを見て、雪歩と春香も身構える。
「狭い廊下じゃ魔法を使うのはヤバイかもね。雪歩、気をつけなさい」
「う、うん。……でも」
 雪歩は腕が変化してから、どうにも拭いきれない違和感を覚えていた。
 今まで使えたはずの魔法が使えないのだ。腕が変化した所為だろうか?
「この腕……うっ、頭が……」
 腕が胎動するたびに、意識が飛びそうになる。
 雪歩はなんとかそれを我慢しながら、シジョウに対した。


 飛びかかってきたヒビキに対し、春香は軽く退く。
 一見、人間のように見えるヒビキだが、中身は完全に悪魔。自らの爪を自在に伸ばし、その鋭い爪で春香に襲いかかる。
 しかし、それは空振り。
 爪は床に突き立つも、すぐに引き抜かれた。
「やるね、自分のひっかきを躱すなんて」
「読めない速さではないわ。まさか……その程度って事はないでしょう?」
「な、なんだと!」
 安い挑発を受け、ヒビキはまたも地面を蹴る。
 だが、真正面から突破するわけではなく、その手に魔力を溜めていた。
「ザンマ!!」
 突き出された手の平から、凄まじい衝撃が放たれる。
 だが、一度千早を圧倒した春香から見れば、それは目晦ましにもならない。
「温いッ!!」
 春香の気合い一喝で掻き消された衝撃。
 周りの埃が舞い、一瞬視界が悪くなるが、相手の気配を探れない事もない。
「捉えた!」
「どうかなッ!?」
 春香は上半身を捻り、次の瞬間に一気に解放する。それに合わせ足を振り切ると、そこから無数の槍が飛び出る。
 それらは全て、ヒビキに襲いかかり、春香は確かな手応えを……
「手応えが、ない!?」
 埃が晴れたすぐ後、ヒビキがまた爪を構えて襲いかかってくる。
 春香は床を転がって回避し、すぐに立ちあがる。
「……マグレって事もあるかしらね」
「マグレかどうか、試してみな!!」
 ヒビキは含み針を噴き出す。
 所詮は針、と見くびった春香はそれを打ち落とした。……が、一本だけその腕に突き立つ。
「かかったね?」
「この程度、どうって事ないわ。見くびられた物ね」
「その油断が、命に関わるよ。覚えておきな!」
 再び魔力を溜め始めたヒビキ。
 だがもう埃は吹き散らしている。春香の不意をつく事は出来ないはずだ。
 ならば今度は威力勝負だろうか?
「食らえ、ザンダイン!!」
 またも放たれる衝撃。しかし先程よりは強い。
 だがそれでも、まだ千早の魔法よりは随分と格下だ。春香に掻き消せないほどではない。
「その程度で……ッ!?」
 だがしかし、突然、春香の身体に痺れが走る。
 一瞬でも隙が出来た春香に、ヒビキの放った衝撃が直撃した。
 春香の身体は宙を舞い、天井に、床に、そして奥の壁に打ちつけられた。
「……ぐっ、これは……!?」
「さっきの針、痺れ針だったんさ! 油断してられるほど、自分は甘い相手じゃないよ」
「小賢しい手を……。アギダイン!!」
 ヒビキに向けて手をかざすと、彼女の周りに幾つか火球が浮かぶ。
 それらが一斉に襲いかかるが、ヒビキは素早くそれを躱した。
 と同時に春香に向かって駆け出す。
「そろそろ仕留めるよ! タルカジャ!」
 駆ける片手間に自分を強化する魔法を唱え、ヒビキは春香に迫る。
「食らえ!!」
「……まだまだ!!」
 ヒビキが爪を振り上げた瞬間、春香の右拳がヒビキの腹部目掛けて突き出される。
 完全に不意打ちを受けたヒビキは、そのカウンターの直撃を受ける。
 そう、タイミング的にはこれ以上ないほど噛み合っている、最高のカウンターだったのだが、ヒビキは口元を持ち上げる。
「甘いさ!」
「なッ……!?」
 春香の拳とヒビキの腹部の間に、何か壁が一枚挟まれたような感覚。
 見える範囲には何もない。ヒビキが何をしたようでもない。
 突然現れた緩衝材が、ヒビキの体を守ったようだった。
 それに驚いた春香は、ヒビキの爪に肩口からザックリ斬られ、傷跡から赤い何かを噴き出させる。
「人修羅のマガツヒ、頂いたよ」
「マガツヒ……?」
「この世界では命の次に大事なもんさ。よぉっく覚えておくと良いよ」
 血のように赤いマガツヒ。自分の爪についたそれを、ヒビキはペロリとなめた。
「っち、趣味悪いわね」
「うっわ、これ美味しい! なぁ、もう少しくれよ!」
「誰が! ……微妙に調子狂うわね……」
 痺れが残る身体でヒビキを睨む春香。
 さっきの『壁』がまだ残っているなら、春香のパンチはヒビキに届かないだろう。
 どうにか勝機を窺っていたその時。

*****

 葛葉シジョウの鋭い剣閃が雪歩に襲いかかる。
 素早く、隙のない一太刀一太刀に、雪歩からは反撃が出来そうもない。
「どうしました、その程度なのですか?」
「うぅ……」
 防戦一方の雪歩。それもそのはず、どうやら左腕以外は生身らしいのだ。
 悪魔化している左腕以外であの剣を受けると、痛いどころの話ではあるまい。
「あまり時間もかけてられません。一気に行きますよ」
「……ッ!」
 シジョウが一度引き、外套をはためかせると、その奥にしまってあったホルスターから銃を抜いた。
 リボルバー式の拳銃。だが、それを受けても雪歩の身体は無事ではいられないだろう。
 銃口が向けられ、すぐに引き金も引かれる。
 乾いた音が廊下に反響する。
 その弾道は雪歩の目に見えていた。悪魔化の副産物だろうか。
 正確に頭を狙われたその銃弾を弾く為に、雪歩は腕を目の前に伸ばす。
 手の平に阻まれた銃弾は跳ねかえり、壁に床にとめり込んだ。
「防げた……!」
「甘すぎる。これがチューナーならば、『人修羅を凌駕するほど』とは過大評価のし過ぎでしょう」
 気が付くと、羽のように軽く跳躍していたシジョウは、雪歩の肩に乗り、剣の切っ先を雪歩の後頭部に向けていた。
 銃弾は目晦ましの布石。本命はこちらだったのだ。
 突然の重圧に、雪歩は床へと倒れこむ。
 それと同時に引き絞られた剣が雪歩の頭目掛けて閃く……だが。
「させるかぁ!!」
「ッ!? なに!?」
 シジョウに向けて迸る炎。廊下の奥から発せられたその炎はシジョウの剣を弾き飛ばした。
 クルクルと回って弾かれた剣は天井に突き立つ。
「……ほ、炎が出たよ!?」
「私の知ってる限り、真さんが持ってる剣はそんな感じでしたけど」
「それが律子の言ってた封印、ってヤツなのかな。今のがこの剣の本当の姿」
 燃え盛る剣を持って現れたのは真一行。
 それを見つけたシジョウは、雪歩を踏みつけてすぐに跳び、天井から剣を引き抜いて真に向かう。
「貴女は……デビルサマナーなのですか?」
 シジョウの放った巻き打ちを受け止めた真。
 その問いには剣を弾いてから答える。
「悪魔を使役する人間をそう呼ぶなら、僕もその範疇なのかもね」
「……葛葉ではない。はぐれか、それとも……良いでしょう」
 そう言ってシジョウは剣を収めた。
「ここは旗色が悪い。一度退きます……が、次に会う時にはそこな人修羅とチューナーは私が討ち取ります。覚えておきなさい。私は葛葉シジョウ。ヤタガラスの命を受け、この国の危機を取り払う者です」
 名乗りに聞き入っていると、シジョウは懐から不思議な玉を取りだし、それを投げつけた。
 瞬間、閃光が走り、その場にいた全員の目をくらます。
 光が消える頃には、シジョウと名乗った女性も、ネコマタもいなくなっていた。

*****

「雪歩! 無事で良かった」
「ま、真ちゃん……」
 真が現れる頃には、既に雪歩の左腕は元に戻っていた。
 ホルスは雪歩に近寄り、左腕を確認する。
「やっぱり、アバタールチューナーになってますね」
「なんですか、それ? 私、どうなっちゃったんですか?」
「今すぐどうこう、ってワケではありませんが、放っておくとマズイですね。詳しい話は後でしましょう。今は移動が先決です」
「そうだね。春香!」
「……ええ、わかってるわ」
 何か苦虫を噛み潰したような顔をしていた春香を呼び、一行はどこか安全な場所を探して歩き始めた。
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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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