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真・菊地探偵事務所 三章 3

3 地下の暴風

 HRインフォメーションの事務所内に、ターミナルと呼ばれるオブジェと同じ形をした物が置かれてあった。
 春香も律子も、こんな物を調度品として置くような趣味は持ち合わせていないし、恐らく、受胎後に誰かが置いた物なのだろう。
 そのターミナルが、無人の事務所内でひとりでに回り始める。
 回転の速度が速まり、それが最高潮に達すると、辺りを閃光で埋めた。
 光が収まると、そこには律子と春香が現れていた。
「ここは……事務所? なんでこんな所に?」
「このオブジェがここに置かれてた所為みたいね。なるほど、やっぱりターミナル同士は繋がってるみたいね」
「アマラ経絡、ってヤツ? 正直、よくわからないけど、便利なモノがあったものね」
 二人が突然、事務所に現れたのにはトリックがある。
 ボルテクス界となったこの世界には、ターミナル同士を繋ぐアマラ経絡と言う物がある。全ての力の源であるマガツヒの通り道であり、世界を繋ぐ情報網であり、移動の為の手段でもある。
 ターミナルの転送機能を使えば、瞬時に別のターミナルへと移動する事が可能なのだ。
「それで、律子は本当に一人で大丈夫なの? 私は悪魔の力を得たみたいだけど、律子はそうでもないんでしょ?」
「言ったでしょ? これでも腕に自信はあるのよ。春香に心配されるほどじゃないわ」
「そう……。なら信じるわ」
 長い間、相棒として培った信頼はある。
 律子が大丈夫だと言う時は、大丈夫だ。
「春香の方はどうなのよ? 何かアテはあるわけ?」
「アテ……か。これと言ってないわね」
 千早がどこに行ったか、なんてわかるわけもないし、自分の力をどう伸ばして良いかもわからない。完全な暗中模索状態である。だが、それで立ち止まるわけにもいかない。
「律子から教わった事よ、アテがないからって諦めないってね。足を使えば情報は集まってくるわ、きっとね」
「……わかってるなら、よし。行ってらっしゃい。お互い、死なない様にね」
「ええ、律子も気をつけて」
 相棒からの信頼を受け、二人はここで別れる事になった。
 ドアを開けて出ていく春香を見て、律子は携帯電話を握る。
「大丈夫、きっとこの世界は変わっている。あの娘は死んだりしないわ」
 自分を勇気付ける様に零し、『らしくない』と自嘲しながら、ターミナルに向き合った。
 情報を集めるなら広く。ターミナルならばそれも簡単に行えるはず。
「さぁて、まずはコイツをどう上手く動かすかが問題ね。腕が鳴るわ」
 仕様書がついているわけでもなし、『前の世界』とはターミナルの中身が変わっているらしい。こちらも暗中模索っぷりは春香に負けていなかった。

*****

 バンナム地下。
 廊下を突き当りまで歩くと、そこに横穴が開いていた。
「風が通ってる……。奥はどこかに繋がってるのかな?」
 多少強い風が穴から吹いてきており、真は帽子を飛ばされない様に押さえる。
「これは外と繋がっているわけではなく、セトが起こしている風でしょう。あの神は嵐と戦争の神ですから」
「ホルスはセトってヤツの事、よく知ってるの?」
「ええ、一応。セトは私の叔父に当たりますし、それに父の仇でもあります。敵をよく知る事は勝ちに繋がりますから」
「叔父が仇……って、なんだか深い関係だったんだね」
 割りと緩い印象しか受けていなかったホルスだが、どうやら色々と背負って生きているらしい。人は見かけによらない、とはよく言ったものだ。
「セトは強大な神です。準備は良いですか?」
 ホルスが確認するのに、真達は無言で頷き、その横穴へと足を踏み入れていった。

 穴の中は入り口からすぐに斜面になっており、下へ下へと降りていく形になっていた。
 奥へ進めば進むほど、セトが起こしているらしい風が強くなり、それから感じられる威圧感も増していく。
「なんか、陰気な場所ね。暗いし、狭いし、さながら冥府って感じ?」
「そうですね……ホルスさんがいなかったら、真っ暗で何も見えません」
「デコちゃんがいればきっと平気なの。そのおでこでなんでも照らしてくれると思うな。ほら、赤鼻のトナカイ、みたいな感じなの」
「どうやらアンタは、私のジオンガの餌食になりたいみたいね」
「ちょ、ちょっと、ダメだよ。こんな所で暴れたら……」
「わかってるわよ! ミキ、ここから出たら覚えてなさいよ」
「あふぅ、ミキ、覚えてるのって苦手だな」
 背後で繰り広げられる言い合いを聞きながら、先頭を行く真は苦笑していた。
 その隣を飛んでいたホルスも、
「準備はいいか、なんて愚問でしたね。皆さん、随分余裕綽々で……」
 と零していた。
「平静を保ってられるのは良い事だと思うよ。まぁ、あんまり気が抜けすぎてても困るけど」
「ええ、ですが気負いすぎても力は発揮できませんし、良い状態なのかもしれません。……にしても懐かしいなぁ、この雰囲気」
「ホルスも前は誰かと一緒にいたの?」
 真に尋ねられ、ホルスはハッとくちばしを押さえる。
 何か言ってはならない事を言ってしまったのだろうか?
「き、聞かなかった事にしてください」
「……ミキもそうだけど、二人は何を隠してるの? って言うか、ホルスとミキはどこで知り合ったのさ?」
「うぅ、黙秘権を行使します」
 これ以上失言しない為か、くちばしをきつく結んだホルスからは、何も聞けなさそうだった。かと言って、ミキはホルス以上に何も教えてくれなさそうだし、結局真は何も知る事が出来ない様だ。
「いつかは教えてくれても良いんじゃない?」
「……いえ、きっとこれは自分から知らないとダメな事なんです。そう言う制約の元、私達はこの世界に特別な存在として現れたんですから」
「ホルスやミキからは何も教えてくれない、って事?」
「すみません……」
「まぁ、何か事情があるなら仕方ないけどさ……」
 多少残念ではあるが、この間、ミキは『消される』とか何とか言っていた気がする。それほどの危険をおしてまで、二人から聞く事でもないか、と自分を納得させた。


 洞窟を更に進み、風が強くなり始めた頃、風に乗って竜の声まで聞こえていた。
「……近いね」
「敵はもうすぐですね」
 先頭を歩いていた真とホルスが足を止め、後ろを振り返る。
「みんな、ここからは注意して。相手は相当強いらしいし、油断は出来ないよ」
「う、うん」
「わかってるわよ」
 雪歩とイオリの返事を聞いて、真は更に奥へと歩く。
 程なくして、開けた場所に出た。ターミナルが置いてあった部屋よりも一回りほど大きいだろうか。
 そこから吹きつけて来る風は既に暴風。息もし辛くなるほどだった。
 部屋の中心を見ると、闇に紛れる様に、漆黒の翼竜がそこにいた。
「……性懲りもなく戻ってきたか、死に損ないめ。余程父の後を追いたいと見える」
 翼竜が地面に足をつけると、風は止み、辺りが俄かに静かになった。
 その竜はホルスを睨みつけて、低く腹に響く声で喋った。
「私は諦めませんよ。貴方を、父の仇を討つまで」
「それで援軍を連れて来たと? ふっ、人間風情に何が出来る」
 真を見て笑った翼竜は、一つ大声で吼える。
「グオオオオオオオオオッ!!」
 壁に反響し、地震のような振動が辺り一面に伝わる。
「な、なんて大声……ッ!」
 慌てて耳を押さえた真達だが、それでもこの大声は暴力的なレベルだった。
 もう少し踏ん張りが利かなかったら、また洞窟の方へ押し戻されるほどだ。
「なめられたものだな!! 人間如きに媚び諂うとは、それでも貴様、神の端くれか!!」
「真さんには神を従えるだけの器があります。貴方も殺されたくなかったら、命乞いをしたらどうです?」
「囀るな! 良いだろう、そこまで言うなら貴様等全員、八つ裂きにして冥界にばら撒いてくれる!!」
 竜はもう一声鳴くと、再び羽ばたき始め、宙に浮いた。
「さぁ、アレがセトです。皆さん、頑張りましょう!」
「が、頑張りましょうじゃないよ! 何勝手に挑発してるのさ!?」
「私は本心を言ったまでですよ。来ますよ!」
 ホルスに注意する間もなく、セトの口から突風が吹き荒れる。
「きゃあ!!」
「い、イオリ!?」
 一行の中で飛び抜けて軽いイオリは、風に煽られ、そのまま洞窟の奥へと吹っ飛ばされた。
「デコちゃんの事は後回しなの! 今背を向けたら、やられちゃうよ!」
「わ、わかってる! ボクとミキで前衛を引き受けるから、ホルスと雪歩は援護をお願い」
「わかりました」「わ、わかった」
 陣形を組み、一行はセトへと立ち向かう。

*****

「これは……」
 地下街から出てきた春香は、その光景に言葉をなくした。
 窪んでいる。隕石でも落ちてきたかのようだった。
 これに似た光景を、一度どこかで見たような気がしていた。
 そう、アレは……。
「あずさって人の家の近くだったっけ。確か、千早ちゃんの魔法で林がこんな風になってた。と言う事は、これも千早ちゃんが?」
 だとすれば一足遅かったのだろう。
 見通しの良いこの場所に、千早どころか、人影は一つも見当たらない。恐らく、入れ違いになったのだ。
「まぁ、悔やんでも仕方ないわ。ここからどこに行ったか探さないと」
 地上には悪魔の姿すら見当たらない。春香は地下街に戻って情報収集する事にした。

 地下に戻ってすぐ、春香はとある悪魔に見つけられる。
「あ、アンタ」
「……ん? 誰よ?」
 深い緑の具足を着込んだ武士が春香に声をかけていた。
「やっぱり、妙な刺青はあるが、間違いないな。アンタ、ハルカだろ?」
「どうして私の名前を!?」
「警戒しなくていい。アンタ、千早を探してるんだろ?」
「……居場所を知ってるの?」
「いいや。だが、この辺りには居ない事は知ってる。どっちに行ったかってのもわかってる」
「なら、さっさと条件を教えなさい」
 こんな世の中でもギブアンドテイク。
 扱っている物は特異だが、春香も一応商人なのだ。その辺のルールは染み込んでいる。
 この悪魔が話しかけてきたのは、『千早の行き先』と言う情報への対価を求めたからだろう。普通の悪魔なら襲い掛かってくるものだが、この悪魔は話しかけてきた。と言う事は話し合いでも解決できるはずだ。
「条件ね。話が早くて助かるぜ」
「何がお望み? 私に出来る事ならある程度やるけど」
「俺を連れてけ」
「……は?」
 その条件はおかしな物だった。
「行く先にちょっと用事があるんだが、一人じゃ通りにくくてな。だから同行させて欲しいって事だ」
「……それだけで良いの? 別に、連れてくのは構わないけど、道中でアンタがどうなっても知らないわよ?」
「お前に心配されるほどヤワじゃないさ。で、どうなんだ?」
「……良いわ、連れていきましょう」
「よっし、交渉成立だな。俺はモムノフ。今後ともよろしくな」
 と言うわけで、春香には妙な道連れが出来た。

*****

 洞窟内に吹き荒れる突風の中、真達はセトを相手に苦戦していた。
「マハガルダイン!!」
「うわっ!!」
 竜巻のような物が真達の目の前に発生し、その風圧で壁に向かって思いきり吹き飛ばされる。真と雪歩は何とか踏ん張った物の、ホルスとミキは壁に背中を強か打ちつけた。
「思った以上に強いな……。雪歩、二人の回復を頼む」
「うん、任せて!」
 力強く頷いた雪歩はホルスとミキに駆け寄り、回復魔法を行使する。
 魔法を行使する度に悪魔に近付いていく雪歩。だが真はそれを止める事はなかった。
 どうやらセトは強大な相手の様で、手を抜いて勝てるとは思えない。
 雪歩の悪魔化は止めたいが、死んでしまっては元も子もないのだ。
「ゴメン、雪歩……。でもボクが必ず元に戻すから」
 痛む胸を押さえ、真は炎の剣を構えてセトに斬りかかる。
「無駄だ!!」
「ぐぅ!」
 だが、セトの羽ばたき一つで、真の進攻は押し止められてしまう。
 何か策がなければセトに勝つ事は出来ないだろう。
「どうしたら良いんだ……」
「諦めろ、人間。貴様等が神に勝つ道理などない。大人しくしているなら、一飲みにしてやるぞ」
「……諦める、だって?」
 その言葉を聞いて、真は喉を鳴らす。
 諦めるなんて事が出来るか。真は諦めを蹴飛ばして、重たい業を背負い、このボルテクス界を作り出したのだ。今更諦めるなんて事が出来るか。
 最後まで、最後の最後まで、足掻いて足掻いて、死んでも諦めるなんて事はしない。
「ボクは、絶対に諦めない!!」
 真の反骨心に火が灯った時、それに応えるかのように、その手に持つ剣の炎も猛る。
 元の鉄の刃だった頃とは比べ物にならないほどのリーチ。それほど強く、その剣は燃えあがっていた。
『我が主よ、我が名を呼べ』
「……だれ?」
『我は汝の守護にして、創造と破壊の二面を持つ神。我が名は輝く炎。我が名を呼べ』
「……輝く炎。君の、名前……」
 真に語り掛けてくるのは、剣。いや、炎その物。
 その声を聞いた途端、真の頭の中にあった開かずの引き出しから、一つ言葉が零れ落ちる。
『我が名を呼べ。我が名は――』
「ヒノカグツチ!!」
 真が剣を高く掲げてその名を口にした瞬間、洞窟の天井を穿ち、一つの閃光が降ってくる。
 何か輝く柱のような物だったが、それは真を直撃した。
「ま、真ちゃん!!」
 それを見て雪歩が泣きそうな悲鳴を上げる。
 しかし、閃光が収まった後、そこには確かに真がいた。どうやら無事な様である。
「これが、この剣の本当の力……。神殺しの剣、ヒノカグツチ」
「ぐぅ、この光……大量のマガツヒを感じる……っ!! 厄介な、やはりここで食い殺しておくか!!」
 セトが猛々しく吼える。それと共に恐ろしいまでの風が吹き荒れるが、目の前にいた真は少しも動じなかった。
「ボクはもう、誰にも負ける気がしない。すぐに片をつけるよ!!」
「人の身に余る言い草よ! 驕るなよ、小僧が!!」
「……ッ!! ボクは――」
 剣の炎がゴォと音を立てて、また一回り大きく燃えあがる。
 それが、巨大な翼竜の姿をしているセトを飲み込むほどの大きさになると、
「――女の子だッ!!」
 真は気合いと共に、それを打ち下ろした。
 剣はセトを頭の天辺から焼き切り、完全に両断する。
 断面からは大量のマガツヒが溢れ、それは真へと吸いこまれていった。
「ぐあ……あぁ……敗れると言うのか……神が、人間如きに……」
「言ったでしょう」
 崩れ逝くセトに、ホルスが返す。
「真さんはそれだけの器があるんです」
「ぐ……おぉ……」
 何の反論も出来ず、セトはそのままマガツヒの塊になって消えた。
 それを全部回収した真は、なんだか気味悪げにその様子を見ていた。
「こ、これって……」
「マガツヒです。心配ないですよ。利にはなっても害にはならないはずですから」
「な、なら良いけど……」
 赤黒い何かが自分の中に入っていく光景は、やはり見ていて気分の良い物ではなかった。


「ったく、酷い目にあったわ!」
 戦闘が終わった後、イオリが一行に合流していた。
「吹っ飛ばされて、壁にぶつかって気絶するわ、道に迷ってどっち行って良いかわかんなくなるわ、ゴロツキ悪魔には追いかけられるわ、散々だったわよ」
「そりゃ大変だったね」
「……まぁ、アンタ達よりは十分マシだったんだろうけどね。手伝えなくて悪かったわね」
 イオリはイオリなりに大変だった様だが、それでも真達を気遣ってくれた。
 いつもはケンカ調子のクセに、偶にしおらしくなる。そこがなんともおかしくて、真は笑って彼女の頭を撫でた。
「ううん、ありがとう、イオリ」
「ちょ、何すんのよ! 髪が乱れるでしょ!!」
 真の手をバシバシ払いながら、イオリは赤い顔をごまかした。
「じゃれるのは構いませんけど、ちょっと良いですか?」
「なに、ホルス?」
「向こうにまだ穴があったんですよ。入ってきたのとは真逆の方向なので、ちょっと気になったんですけど……」
 ホルスが指す先、確かに穴が開いていた。
 先ほどの先頭で偶然出来た、とも考え難いだろうか。穴はかなり奥まで続いているらしい。
 それに、どうやらまだ風が吹いている。
「……向こうに出口があるのかな?」
「どうするの? 行ってみる?」
「あ、危ない事はやめようよ。一度戻った方が良いよ」
 尻込みする雪歩。だが、興味が引かれるのも事実だ。
 風が通っている、と言う事は外に通じていると言う事。春香達と同じ道を行くよりは、別の出口を目指した方が有意義かもしれない。
「……行ってみよう。大丈夫、雪歩はちゃんと守るからさ」
「真ちゃん……」
 真に微笑みかけられ、雪歩はそれ以上何も言えなくなっていた。
 一行は奥の穴を進む事にした。


 穴の手前で、殿を任されていたホルスが一度、部屋を振りかえる。
「お父さん、仇は討ちましたよ」
 セトのいなくなったその部屋は、とても静かで、ホルスの小声はしかし、よく響く様だった。その声が今はこの世にいない父に届いたかどうかは知る術もない。
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テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

真・菊地探偵事務所 三章 2

2 分かつ道

「安全な場所って言ったって、ボクが歩いてきた限り、バンナムの中は悪魔だらけだったよ」
 地下廊下を歩きながら、真はそんな風にぼやいた。
 ホルスに会うまで、廊下を半ば闇雲と言って言いぐらいに歩き回っていたのだ。彼女の言には実感がこもっていた。
 だが、そんな真にホルスがさえずる。
「聞いたところによると、ターミナルって言う機械の近くには悪魔が寄り付かないらしいですよ? なんでも、あの機械に近付くとアマラ経絡に引き込まれるかも、なんですって」
「アマラ経絡? ……良くわかんないけど、悪魔が近付けないって言うなら、イオリやミキもダメなんじゃない?」
 ターミナルがある場所自体はわかる。真が倒れていた部屋にあった円柱型の装置がそれだ。だが、悪魔が近付けないなら、今、一行の中にいる悪魔達も同様の影響を受けるのではなかろうか?
「いえ、サマナーに使役されている悪魔は大丈夫みたいです。詳しい事を言うと多分、頭がこんがらがるので端折りますけど」
「……うん、ならホルスを信じよう。ターミナルの部屋だったね」
 真は一つ頷き、廊下を先だって歩き始めた。


 廊下を歩いている途中、雪歩が春香に近寄る。
「あの、春香ちゃん」
「……ん? なに?」
「大丈夫? なんか、さっきから黙ってるけど……」
「ああ、平気よ。単に考え事してるだけ。気にしないで」
 雪歩に心配され、春香はそれに笑って答えた。
 彼女の心中は、今、二つの事に支配されている。
 一つは見当たらない千早の事。もう一つはあのネコマタとの戦闘での事だ。
 届かなかった拳。アレにどう言うトリックが使われているかはわからないが、このままではあのネコマタには勝てない。それだけで済めばいいが、ネコマタより強い悪魔がいたりしたら、その悪魔にも勝てないのだ。
 これは、春香にとって早急に解決すべき案件であった。
「どうしたものかしらね……」
 呟きながら、ずんずん先を行く真について行った。

*****

 何度か襲いかかってきた悪魔を退けつつ、一行はターミナルの部屋までやって来た。
「イオリ達は、もうマグネタイトは必要ないみたいだね?」
「ええ、どうやらそうみたいね。ここが魔界に近いからじゃないかしら? 向こうじゃ普通に過ごしてたわけだし、ここもそう言う場所なのかもね?」
 今までマグネタイトを消費して物質化していたイオリとミキ。だが、受胎が起きてからこっち、マグネタイトバッテリー内のマグネタイトが減っていない。
 これはやはり、顕現や維持にマグネタイトを使ってないからなのだろう。
「ありがたい事じゃない。こうなりゃ、私だって好き勝手出来るわ」
「……って言っても、イオリはそれほど強くないだろ?」
「言ってくれるわね……。でもそんな事言ってられるのも今の内よ。見てなさい、私には取っておきの秘策があるんだから、にひひ」
 企み顔で笑うイオリ。その手には大きな袋が握られていた。
 イオリの身体とほぼ同等の大きさのある袋を担ぐのは、少しつらそうだった。
「僕が持とうか?」
「必要ないわよ! くすねられたら困るし」
「そんな事しないよ! なんで仲魔の持ち物を盗まないとならないのさ!?」
「人間ってのはこう言うのに弱い、って聞くしね。それに女ならなおさら。絶対に渡せないわ。これは私の、起死回生の一手なんだから」
 どうやら絶対死守を貫こうとしているらしいイオリ。親切心から手伝いを申し出た真も、バカらしくなってその手を引いた。
「さて、ホルス。話を聞かせて欲しいんだけど……」
「あ、待ってください……何か来ます」
 ホルスが話し始めようとした時、部屋の外に何かの気配があった。
 ターミナルに悪魔は近寄れない、と言う話だったが、だとすればこの気配は……。
 最大限に警戒する一行の注目の中、ドアが開いた。
「あー、やっと見つけた! 久しぶりね、真、春香」
「り、律子!?」
 やって来たのは春香の相棒、律子だった。
「なんでこんな所に!?」
「なんで、って事はないでしょ。折角アンタ達を追っかけてきたのに」
「でも、そんな危険な……」
 律子を見ると、その手に一振りの剣を持っていた。
 自衛用の剣だろうが、それにしても一人で悪魔がごった返す中を歩くのは危険だ。
「大丈夫よ、これでも腕に自信はあるんだから。それより……アンタ達、外がどうなってるかもう見た?」
「外? 春香ちゃんが見たって……」
「ええ、見たわ。なんなの、あれ?」
「他は誰も見てないか……だったら信じがたいかもね。でも、これから言う事は一応真実よ」
 その場にいた全員の顔を見回し、律子は一呼吸置いて口を開く。
「この世界は太陽……いえ、カグツチを中心に閉塞したわ。次の世界へと生まれ変わる為の姿、ボルテクス界になったの」
「ボルテクス界……?」
 疑問の声を上げたのは雪歩だった。
「なんなんですか、それ」
「平たく言うと、地面がめくれ上がって、天井でくっついたのよ。地球は元々丸かったけど、それが逆に丸くなっちゃったって事。……いや、逆にわかり難いか」
 説明を聞きつつ、首を傾げ始める雪歩を前に、律子はどう説明して良い物やら考えていた。なんにしても常識外の事が起こったのだ。説明するのは少し骨が折れる。
「雪歩もきっと見ればわかるわ。百聞は一見にしかず、ってね」
「はぁ……」
「まぁ、それは置いといて、受胎が起きたって事は、真は社長を止めるのに失敗した、って事で良いのかしら?」
「……いや、これはボクが起こした事だ」
「ま、真ちゃん!?」
 真の返答に、雪歩は驚いて尋ね返した。イオリもその言葉に多少動揺している。
「アンタ、まさかあの高木ってヤツに言いくるめられたわけ!?」
「違うよ。ボクはボクの意思でこの受胎を起こした。説明は……確証が取れてないから今は無理だけど」
「確証が取れてないって……それでも受胎を起こしたっての!? あっきれた。じゃあ、今まで私達は何の為に動いてたの?」
「その事については謝るよ。でも、ボクには何を排してでもやらなきゃならない事があったんだ」
 あのまま全ての悪魔を魔界へ押し戻していたら、雪歩も魔界へと追いやられていたかもしれない。真はそれを避けたかったのだ。
 だが、それは『かもしれない』と言うだけだった。もしかしたら雪歩は悪魔化しておらず、魔界へ行く事もなかったかもしれない。
 しかし、逆を言えばもしかしたら魔界へと行ったかもしれない。
 そんな危ない橋を渡るのは無理だったのだ。
「起こった事をとやかく言ってもなんにもならないわ。今は、これからどうするかを話すべきじゃない?」
「……それもそうね。私は一応、真の使役悪魔なワケだし、別にどうこう言うわけでもないけど」
「ミキは全然構わないの」
「……アンタはおきらくで良いわね」
「デコちゃんは色々考え過ぎなの。若ハゲになるよ」
「こんの……ッ!!」
 殺伐とした追いかけっこを始める二人を放って、律子は咳払いをする。
「で、これからの事だけど、私は一度、この世界を回ってくる事を勧めるわ。今、この世界で何が起こってるか、色々わかってないと、指標にはならないだろうし」
「私もそれに賛成です。今の真さんはあんまり覚えてないみたいですし、まずは認識を広くするべきですね」
 律子とホルスの意見が一致する。
 確かに、今『変化した世界』をしっかり認識していない真と雪歩。ならば、これからどうするべきか、なんて容易に答えは出せないだろう。
 ならば情報を集め、自らがどう動くべきかを見極める必要がある。
「ボクはそれで構わないよ。高木社長がどこにいるかもわからないし、彼がまだ何か良からぬ事を考えているなら止めないと」
「高木社長……ですか」
「どうしたの、ホルス?」
「あ、いえ」
 言葉を濁すホルス。どうやら言いたくない事らしい。
「雪歩ちゃんはどうなんですか?」
「え? わ、私は真ちゃんについて行くだけですから……」
「じゃあ決まりね。移動方法は……」
「あ、ちょっと待ってください」「ちょっと待って」
 ホルスと春香が同時に待ったをかけた。
 それに気付いたホルスは春香の様子をうかがったが、春香の方はホルスなんかお構いなしで口を開く。
「私は、行きたい場所があるの」
「行きたい場所? どこ? 急ぐの?」
「真には申し訳ないけど、ここからは私は一人で行かせてもらうわ。貴女と結んだ契約も、どうやら薄れてるみたいだしね」
「そうなの? ボクは良くわからないけど……」
「……じゃあ、これは私に限った事なのかしらね? どっちにしろ、好都合よ。私は一人で行くわ。もう真に頼らなくても身体の自由は利くし、千早ちゃんを探さないと」
「そう言えば、千早はどこに行ったの?」
「それがわからないから探しに行くのよ。どこかで情報を得られたら、私に教えてくれると嬉しいわね」
 つまり、二手に分かれると言う事だ。
 受胎が起きる前から、春香はワンマンプレーでも成り立っていた。あまり心配する事もないだろうか。だとすれば、二手に分かれるのは有効な手だ。
 情報は広く集めた方が良いのは当然の道理である。
「じゃあ私も春香と真とは別行動をとるわね。情報屋の名にかけて、有益な情報をドッサリ持って来てやるから、期待しておきなさい」
「律子は一人で大丈夫なの?」
「大丈夫よ。前にも言ったでしょ? 春香とつるむ前はフリーのデビルバスターしてたのよ」
「で、デビルバスター?」
 どうやら春香には話していたようだが、真にとっては初耳だ。それに、なんとも胡散臭い職業名が出てきた。語感からするに、退魔士だろうか。
 懐疑の視線を向けられ、律子は慌てて説明する。
「町がこんな風になる前にも、ちょこちょこっと悪魔が現界に現れる事はあったのよ。だからそう言うはぐれを狩って、生計を立ててたわけ」
「それで食いっぱぐれなかったんだ……」
「結構実入りは良かったのよ。って、そんな話じゃなくて。春香の話は終わったとして、ホルスの話は?」
 律子に話を振られ、ホルスは一度翼をはためかせた。
「真さんに折り入って頼みがあるんですよ」
「頼み?」
「このバンナムの地下に、セトと言う強大な悪神がいるんです。ソイツを、私と一緒に倒して欲しいんです。悔しいですけど、今の私じゃセトを倒すに至らなくて……」
「……うん、良いよ。ホルスにはまだ聞きたいこともあるしね。この世界の事とか」
「ホントですか!? じゃあ、今後ともよろしくって事で!」
 と言うわけで、ホルスの頼みを聞いて、真達は春香と律子と別れ、セトという神の元へ行く事になった。

*****

 その頃、変わり果てた町の中を、千早は一人で歩いていた。
 元々はHRインフォメーションがあった地域。そこはやはり悪魔達がうろついており、ガラスが割れていたり、コンクリが抉れていたり、ビルの壁が崩れ落ちていたりと、さながらゴーストタウンの様だった。
 だが、町が静かなわけもなく、そこかしこから千早に向けて、悪魔からの殺気が飛んで来ていた。
「……私は……」
 千早は手に持っていたペルソナカードに視線を落とし、呟く。
「私には力が足りない。まだ……春香に勝てない」
 バンナムでの一戦で思い知った。春香とは格が違う。
 ペルソナと言う強大な力を得た千早でさえ、春香には敵わない。……だが、諦めるわけにもいかない。弟の仇はまだ討っていないのだ。
「力をつけないと……。このペルソナよりも、もっと強い、もっと強い……」
「見違えたなぁ、おい」
 そんな千早の目の前に、一匹の悪魔が踊り出た。
 深い緑の具足、金の矛。風格が物語る彼の素性、武士。
「……誰? 何か用?」
「はっ、誰と来たか。……まぁしゃーないわな、あの爺さんの話じゃ、覚えてる方がおかしいらしいからな」
「何の話をしてるの? ……用がないなら消えて」
「用ならあるさ」
 悪魔は担いでいた矛の先を千早に向け、鋭く睨む。
 千早の肌がピリピリ痛むほどの殺気。否応にも全身の神経が研ぎ澄まされる。
「勘は悪くねぇみたいだな。だったらわかるな? 俺の言いたい事は」
「私と戦うって言うの? 雑魚悪魔に遅れを取るほど、私は弱くはないわよ」
 春香には負けても、それぐらいの自負はある。
 実際、今の所春香以外には負けなしだ。驕りや自惚れではなく、これはれっきとした事実を元にした自信。
 だが……。
「なら、試してみようか?」
 悪魔の突撃を、一瞬見逃した。
 瞬速で繰り出される突き。一点突破力は計り知れない。
 凄まじい一撃を、千早は回避出来ず、両手の平で受け止める。
「……くっ!」
「ほぅ、受け止めたか」
「なんなの、貴方!」
 受け止めた千早の両手には、特に傷が見られるでもない。ペルソナによる体力強化の恩恵だろう。
 しかし、貫かれるかと思うほどの衝撃は受けた。これは、普通のゴロツキ悪魔のレベルではない。
「ちょっとワケありでな」
「ちょっとって……気に入らないわ!」
 矛を弾き飛ばした千早は、悪魔から距離を取ってペルソナカードを構える。
「シヴァ! アイツを倒すわよ!!」
 千早の背後に、青い肌の魔神が現れる。
 それを見て軽く口笛を吹いた悪魔。どうやらシヴァの姿を見てもまだ余裕らしい。
「空元気ってヤツかしら? どこまで虚勢を張りつづけられるか、見物ね」
「お前こそ、いつまでその仮面を被ってるのか、見物だな」
「何をわかった風な事を!!」
 千早が叫ぶと共にシヴァが三叉の戟を、悪魔に向かって振り下ろす。
 だが、悪魔はそれを容易く躱し、千早に向かって距離を詰める。
「くっ、ザンダイン!!」
「甘ぇ!!」
 千早の手から飛び出した衝撃波を、悪魔は気合いと共に打ち消す。
「……春香と同じ……ッ!? それほどの力を持ってるというの!?」
「ボサっとすんなよ!」
 至近距離から、またも突撃。
 先程よりも確かな殺傷力を増したその矛先は、千早の頭を捉えようと迫る。
 しかし、それよりも速く、矛先と千早の頭の間にシヴァの戟が入る。悪魔の矛は戟に弾かれた。
「この悪魔……危ない……ッ! 油断してると、やられるッ!!」
 気を引き締めた千早は、シヴァを操り、戟を使って悪魔を弾きあげる。
 宙を舞った悪魔は身動きが取れないようだった。
「もう一度、ザンダイン!!」
 再び衝撃波を発生させた千早。
 悪魔はそれを受けて、近くのビルへ衝突する。
 ビルを半壊させるほどの威力。直撃したなら、あの悪魔もタダでは済まないはずだが、それでも油断は出来ない。
 認識を新たにしなくては。あの悪魔は決して『雑魚』ではない。
「でも……アレだけの一撃ならきっと……」
「甘いって言ってるだろ!!」
 まだ晴れぬ土埃の中から、悪魔が矢弓の様に弾け飛んで来る。
 一直線すぎるその突撃を、千早は難なく躱し、距離を取る。
 悪魔が着弾したそこは、地面を大きく削り、ちょっとしたクレーターの様になっていた。
「甘いのはどっちよ。さっきから単調な突撃ばかり。私をなめているの?」
「そんなつもりはねぇよ。本当のお前にゃ、ちっとばかし尊敬すらしてるんだぜ」
「本当の……私?」
「そうだよ。そんなゴツい仮面をつけたお前じゃなく、本当のお前だ」
「何をワケのわからない事を……」
「じゃあお前、あの女はどうした? ハルカっつったか?」
「ッ!? 春香を知ってるの!?」
 驚きだった。まさか春香を知っている悪魔がいるとは。
 先程から謎の発言ばかりするあの悪魔だが、またより一層謎が深まった。
「貴方、本当に何者なの? 誰かに命令されて、私を狙ってるの?」
「俺ぁ別に、誰に命令されてるわけでもねぇ。誰の物でもねぇ。俺は俺の意思で、お前の前に立ち塞がってるんだ」
「だから、何の目的でッ!?」
「今のお前にゃ、話す事はねぇ。顔洗って出なおして来い!」
「……もう良いわ、悪魔なんかの言葉に耳を貸した私がバカだった!」
 千早はカードを構え、魔法を操る。
 瞬間、悪魔の目の前で火花が弾ける。
「消し飛べ!! メギドラオンッ!!」
 走る閃光、そして爆音。
 広大な範囲を飲みこむ爆発が起き、一面を焼け野原にする。
 ビルはほとんど崩れ落ち、地面は砕け、全てを飲みこむ爆炎は辺りにいた悪魔すら飲みこんだ。
「はぁ、はぁ……これなら……」
 煙が立ちこめる中、辺りを窺ってみるが、悪魔の気配は……。
「三度目だ。甘ぇ!!」
「くっ!!」
 煙の中からでも正確な突き。
 千早はそれを紙一重で避けるが、悪魔の攻撃はやまない。
 矛先を引かれ、代わりに石突が下方から飛んで来る。
 退いて躱そうとすると、足元に落ちていた瓦礫に足を取られた。
「きゃ!」
 完全にバランスを崩した千早。その腹部に、石突が深く埋まる。
 まともに受身も取れぬまま、背中を強か打ちつけた千早は、静かに目を閉じた。
「……死んだワケじゃないだろうな。そんなにヤワだとは思ってねーぞ」
 動かなくなった千早を見て、悪魔は自分の兜を軽く叩いた。
 軽く脈を診たり、呼吸の確認をしてみたりすると、確かに生きている。
「一安心だな。……にしても、これがホントに千早かよ。俄かに信じられねぇな」
 そんな事を呟きながら、悪魔は千早を担ぎ、その場を後にした。

*****

 千早のメギドラオンの範囲外だった場所には、まだ幾つかビルが残っていたし、地下の町も無事な場所が残っていた。
 千早は知らない事だがHRインフォメーションの事務所も無事で、その辺りの地下街もほぼ完全に残っていた。
 その近辺に一つ、元々はブティックがあった場所に、別の施設が出来あがっていた。
「……ん」
「目が覚めましたか」
 静かな水音に目を覚ました千早。目の前には不思議な雰囲気の女性が座っていた。
「あ、貴女は……!?」
「ご安心なさい、私は敵ではありません。私は全ての中立なる者、この泉の管理者。我が泉は全ての者に癒しを与える物です」
「よくわからないけど……貴女が助けてくれたの?」
「貴女の傷を癒したのは私ですが、貴女をここまで運んだのは悪魔です」
「悪魔……まさか、武士みたいな感じの、長い矛を持った?」
「ええ、確か、そのような外見をしておりました」
 間違いない。千早に襲いかかってきたあの悪魔だった。
 だが、襲いかかってきたのに千早を助ける、とはどういう事だろうか?
 真意は読めないが、とりあえず次に会ってもあまり友好的な態度は取れそうにない。
「代価も彼の悪魔から頂きました。目が覚めたのならすぐに旅立つとよろしいでしょう」
「……旅立つって言ったって……」
 特に行き先など決めてはいない。ただ、力を求めるならここで燻っているよりはマシだが。
「力……今よりもっと強い力を見つけないと。あの悪魔にも、春香にも、誰にも負けないような力を……」
「では行きなさい。決してこちらを振り返ってはいけませんよ」
 女性に見送られ、千早は泉を後にした。


 電気の通っていない地下街は流石に暗いだろう、と思ったのだが、案外と明るかった。
 何故か電灯が灯っているのである。まさかとは思うが、どこかに発電施設があるのだろうか?
「そんな事より、ベルベットルーム……あそこへ行かないと」
 より強いペルソナを得るにはあそこが必要だ。
 千早の強さはペルソナに因る。だとすればベルベットルームで強いペルソナを手に入れるのが増強に繋がるのだ。
 だが、シヴァはかなり高位のペルソナ。これ以上を求めるとなると難しいかもしれない。
 それでも行かなくては。今のままではあの悪魔にも、春香にも勝てない。
「契約者の鍵、これがあるなら、ベルベットルームもどこかにあるはず」
 千早はポケットの中にある鍵を確かめ、地下街へと消えた。

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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